Artist:
The BAR vol. 6
「ざわめきのあらわれ/Divided Against Ourselves」
山本現代では、2013年7月13日から7月27日まで、NPO法人アーツイニシアティブトウキョウ[AIT/エイト] 主催による、中南米からの気鋭のアーティスト2名の新作展、The BAR vol. 6 「ざわめきのあらわれ/Divided Against Ourselves」を開催いたします。
本プログラムは、ビジネスの専門家の集まりである「バッカーズ・ファンデーション」と、数々の現代アートの事業を手がけるAITが共同で作家選定から展覧会づくりまでを行う、ユニークなアーティスト・イン・レジデンスです。
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コスタリカ出身のアレグラ・パチェコは、主に写真やドローイング、インスタレーションを制作しています。2012年に制作した「Boobs(乳房)」では、コスタリカでも特に移民が多いラ・カルピオ地区の女性たちと共同制作をし、乳房の形をしたソフト・スカルプチャーを制作しました。カラフルな壁紙と、クッションのように床に散らばる乳房の数々。一見、子供の遊び場のようにも見える無垢な空間は、同時に移民女性における労働や社会状況も浮き彫りにしています。この作品の売り上げは全て、地区の女性支援に充てられました。本展では、東京の密集する建築から構想を得た写真作品とインスタレーションを制作します。そこでは、都市空間において無意識のうちに人々の身体に刷り込まれていく秩序とともに 、機械化され、閉塞的な空間に飲み込まれていく私たちの近未来のあり方が映し出されています。
今回、初来日となるアルベルト・ロドリゲス・ コジアは、インターネットや新聞、テレビコマーシャルなどから集めたイメージを引用し、映像作品やドローイングを制作しています。2011年には、街で見つけたグラフィティや風刺画など、匿名の表現を集めた「みんなの一番(La Favorita)」プロジェクトを行い、社会に溢れる声無き声の集合体を展示しました。いまだ不安定といえる政治背景を持つグアテマラ出身の コジアは、氾濫するメディアイメージを巧みに借りながら、そうした社会のあり方を嘲笑します。本展では、グアテマラにおけるそうしたシチュエーションと、ラブホテルや公衆トイレなど、東京で目撃したイメージを用い、どこにもない物語を版画作品として紡ぎ出します。
二人の作品に共通するのは、親しみやすいモチーフをユーモラスに仕立てながら、自身を取り囲む社会の暗部や抑圧、そしてそのシステムの裂け目を秀逸に浮かび上がらせていることといえるでしょう。
アートコレクターの台頭や、アートマーケットの拡大により、近年、中南米のアートシーンは世界の注目を集めています。その一方で、一つひとつの国の複雑な社会情勢や文化、また、創造力を、私たちはまだまだ知る機会が少ないといえます。
親密さのみではなく、時に相互の言語・社会的な差異や誤解に気づきながら時間を共有するアーティスト・イン・レジデンス。アーティストの目を通してその経験を眺めてみることは、私たちに未だ知り得ぬものを想像する力を与えてくれることでしょう。
テキスト:堀内奈穂子[AIT / エイト]
「ざわめきのあらわれ/Divided Against Ourselves」
AIT / エイト プレスリリース
About the artists:
アレグラ・パチェコ
アルベルト・ロドリゲス・コジア