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Artist:

宇治野宗輝 「Lives in Japan」

 

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Plywood Stories 2, 2018, Video

 

宇治野宗輝 個展

「ライヴズ・イン・ジャパン」

 

2018年3月3日(土)〜4月7日(土)
日月祝休廊
開廊時間:11:00-18:00 / 11:00-20:00(金)
オープニングレセプション: 2018年3月3日(土) 18:00-20:00

協力: DMM.make

 

六本木クロッシング2010展やヨコハマトリエンナーレ2017において、大規模なインスタレーションで強烈な存在感を示した宇治野宗輝は、ブレンダー、エレキギターやヘアドライヤなどの身近にあるマスプロダクツを流用しながらそれらを再構成し、大量消費社会の後に訪れる大量廃棄文化へのアイロニーと、アメリカを通して日本に伝わってきたロックンロールやインダストリアル・ミュージックなどの輸入された文化を考察した作品やパフォーマンスで、その表現の幅を拡張し続けてきました。

それらは、家電などを組み合わせたサウンド・スカルプチュア『The Rotators(ザ・ローテーターズ)』シリーズ、美術輸送用木箱を援用して建築物に見立てた『Plywood City(プライウッド・シティ)』シリーズ、外来語の概念をカタカナに置き換え受け入れてきた日本の現状をグラフィカルに表現した『日本シリーズ』などに枝分かれし創出されてきましたが、いずれの作品においても宇治野の作品の原点は、アメリカナイズされた戦後日本に人工的に組み込まれた輸入文化とテクノロジーに対する批評的視点であると言えます。

 今回の個展は、全て新作で構成されます。構成要素は三つあり、まずヨコハマトリエンナーレ2017で展示された作品『プライウッド新地』の発展形ともいうべき映像インスタレーション『ライヴズ・イン・ジャパン』と『電波街(Radiowave Quarter)』、次にウォールドローイングさながらの巨大な配線図のシリーズ、最後に宇治野が自らの作品制作の原点を語る映像作品『プライウッド・シティ・ストーリーズ 2』です。

 映像作品『ライヴズ・イン・ジャパン』と『電波街(Radiowave Quarter)』は、『プライウッド新地』で使用されていた複数の家電をそれぞれ独立したキャラクターに見立て、稼働する様をパフォーマンスとして記録し、マルチ・ディスプレイでシンクロさせたサウンド・インスタレーションと、様々な国から発信される短波ラジオを捉えた受信機をライヴ映像として撮影し、複数台同期させた、いずれも新しい試みの作品です。特に『ライヴズ・イン・ジャパン』に出演する家電は全て和室や日本の住空間で撮影されており、それらの躍動的な姿や、轟々としたビートには、戦後の日本が持つ欧米文化へのストレートな憧憬が顕在化しているかのようです。今までインスタレーションの一部として存在していた「モノ(マスプロダクトの数々)」が、それぞれ映像に落とし込まれ、データ化され、同期して新たな音を生み出すこれらの映像作品は、非常に実験的で、宇治野の新境地ともいえる作品となるでしょう。

 また、本展の二つ目の構成要素である配線図のドローイングは、今までサウンド・スカルプチュアの補助的役割を担っていましたが、本展ではそれ自体で成立する作品として制作されます。合板(=プライウッド)ではなく、木造建築用の羽目板などをパネルにしたこの作品は、今展の映像作品の内容を全て網羅する大規模な配線図となり、会期中に公開制作される予定です。

  三つめの作品『プライウッド・シティ・ストーリーズ 2』は、『1』に引き続き宇治野本人による「日本人英語」の一人語りで進行する映像シリーズの新作です。今回発表される『2』では、先の『ライヴズ・イン・ジャパン』に登場する家電や、日本の住空間を中心に宇治野の原風景が語られます。幼少期、新たに生活に割り込んできたブラウン管テレビが、畳にその足を食い込ませていた違和感や、陶器や漆器に見出される陰、闇などを愛でる陰翳礼讃の日本の美意識に対して、家庭で使われ始めたタッパーウエアの工業的な透明感など、外来文化に浴し共生してきた、戦後日本を批評的に再考します。

 今、私たちが生きるこの時代は、インターネットや情報化により「モノ」がより小さく、少なく、そして無くなりつつあります。一方宇治野の作品は大量生産品という「物質」で構成され作り上げられており、時にそれらはつながり合い巨大な姿となり、「モノ」だけが持つ圧倒的な現存を称えてきました。「物質文明のリサーチ」を標榜する宇治野が、今回の個展では近年加速度的に発達する新しい技術と時代性を鑑み、あえて「モノ」の不在の中でみせる、新しい試みです。

 

 

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2017年の横浜トリエンナーレで発表した『プライウッド新地』は:

1)モーターを使った家電製品、エレキギター、家具、美術輸送用木箱、照明器具などを組み合わせたオブジェクトと、モーターの動きによるそれらオブジェクトのパフォーマンス、そしてそのライヴ映像/サウンドと、同期したプログラムによってコントロールされる舞台照明が組み合わさった構造の、時間軸を持った「シアター」的なパート

2)パネルに描かれたドローイング

3)組み込まれたシングル・チャンネル映像作品「プライウッド・シティ・ストーリーズ 1」
の3つのパートからなる、複合メディアのインスタレーションだった。

今回、最新の内容で、これらの作品の要素を異なる構造で組み立てた展示にしようと思う。

1)を今回、マルチ・ディスプレイの映像作品として、映像メディアの言語に翻訳することに挑戦する。映像にあらわれるエレキギターと家電製品が組み合わさったいつもの「キャラクター」が登場する背景は、和室。日本において、古典的な家電が現れるロケーションとしては、正しい場所だ。

題して、ライヴ・イン・ジャパンではなく「ライヴズ・イン・ジャパン」。

もうひとつ、『プライウッド新地』の「コマンド・センター」セクションでも配置されていたラジオをフィーチャーした別の映像作品を発表したい。
『プライウッド新地』ではラジオ1台で受信した放送をライヴでスイッチングしていたが、今回はライヴ・レコーディングされた複数のラジオの映像作品(受信中のラジオを撮影している)。近代の国民国家がいっぱいいっぱいになっている現在なので、アーティストらしい「国境なんかなくなってしまえばいいのに!」というアナキズムで世界平和のアンセムを短波ラジオのBCLホーム・レコーディングで作ろうと思う。電波に国境はないので。こちらは、「プライウッド・シティ」の一区画として、光るラジオのインジケーターを夜景に見立て、タイトルは『電波街(Radiowave Quarter)』。

2)そもそも最初は、サウンド・スカルプチュアの展示が完成したのち、展示期間中のアクシデントの解決法の提示や資料のために作っていた、「マップ」もしくは「マニュアル」と呼んでいる配線図などのドローイングだったが、完成後オープン前に夜を徹して壁画のように壁に描いたり、会期中にパネルに描いたりするようになった。あくまでスカルプチュアやインスタレーションの補助であったが、今回はそれ自体で成立する作品として完成させることに挑戦したい。ドローイング自体はいつものインダストリアル・マーカーを用いたものだが、木造建築の材料の羽目板などの板材を用いた構造体にドローイング。ほか通常のドローイングも含め、描かれる内容は、今回の映像作品の内容をすべて網羅する内容を、オープン後会期中も制作。

3)『プライウッド・シティ・ストーリーズ1』の続編、シングル・チャンネル映像作品『プライウッド・シティ・ストーリーズ 2』を発表。英語が母語でない「日本人英語」による一人語りで進行する、ドキュメンタリー風な形式の、シリーズの最新作。日本の伝統と輸入文化、テレビや照明器具や畳などにフォーカスし、日本の近代を再定義し、1)2)を補完する内容。

宇治野宗輝

2018年1月
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Lives in Japan, 2018, Video