Artist:小林耕平
小林耕平展「6」
小林耕平は90年代後半に名古屋アートシーンを活発に牽引してきたアーティスト自営スペース「art space dot」の主要メンバーのひとりで
99年の福井ビエンナーレで頭角を現した、映像作品をメインに制作する作家です。
99年から01年にかけて空間概念や時間を剥奪した世界の中で蠢いたり、増殖したりする人の形をした、しかし「影」でしかなく、また誰でもない、艶かしい「人体」の作品を展開し、
また03年には、ジオラマで「街」を制作し、その人影やその気配すらない「街」=「奇妙な場所」を延々と映し出した映像、「1-10-1」を発表しています。
彼の作品は、ほとんどがモノクロで、一貫して無音です。「1-10-1」においては多層なグレートーンが表現されており、モノクロ映像表現の豊かさをみせています。
04年にはそれまでのひとつのミニマルな動作や風景を延々と映し出すものとは異なり、様々な風景、動作をランダムに編集した作品「2-2-1」を発表し、話題を集めました。
それぞれの映像の断片は、一見、関係性を壊された無意味な映像の羅列に思えます。
しかし、この「どこにでもあり/どこでもない場所」は、どこか不安感を与え、心象風景のような印象を観るものに残します。
今秋には豊田市美術館で行われるグループ展「ベリー・ベリー・ヒューマン」(10/15~)にも参加予定で、現在最も注目に値する作家です。
今回、山本現代では新作映像「2-3」、及び初発表の写真のシリーズをご紹介いたします。
それまでの無音の作品とは異なりさまざまな「音」が入っております。
前年多摩美術大学美術館にて発表した作品「2-2-1」のシリーズとして位置づけられており、どこか不穏で多彩な「物語の断片」を投げかけ、
彼の作品はいつもそうですが、回答を提示するのではなく、観るものに疑問や、不安感のようなものを残します。
初発表の写真シリーズは、映像と関連づけられており、小林耕平独特の世界観を強化するものになるでしょう。