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Artist:

平川なつみ展「ユートピア」

Natsumi HIRAKAWA

Natsumi HIRAKAWA

 

 

 

山本現代では、2011年10月8日から11月5日まで、 平川なつみ個展「ユートピア」を開催する運びとなりましたことをご案内申し上げます。

1987年生まれの平川は、故郷の大分にて制作活動を重ねている作家です。昨年は熊本市現代美術館にて個展を開催し作品が同館に収蔵されるなど、その活躍の場を拡げています。
「ユートピア」と題した今展では、平川の新作平面作品十数点を展示いたします。

平川が描く絵画の主題は、彼女の脳裏に閃いたフィクションの世界でのワンシーンです。
その世界の多くはうらぶれた風景、謎めいた登場人物で成り立っていますが、平川によればそれは「夢の中の理想や遊園地、音楽や行ったことのある場所から受けた印象、奇妙に感じたものへの好奇心」から生まれた世界で、「これらを想うことは完全なる現実逃避」でありつつも、それこそが平川にとっての「もう一つの現実」なのだと言います。

また平川は、自身の制作についてこのように語っています。

現代の閉塞感から起こるものが絵に影響している。先の見えない時代に産まれた事からくる、不安や倦怠感、皮肉的な気持ち。
バブル以降の世界に暗さや奇妙さを感じている。ネットや環境、コミュニケーション、メディア …人間が現代社会で抱えている問題について。そういう時代に対して、もがくような気持ちで、 刹那的な中に面白さを、暗い中に世に対しての疑問や警鐘としての奇妙さを、面白さの中にやはり悲しみを、POPな中に冷たさを、いつでもそれらを忘れるなよと言う意味も含めて、描いている。物を言わずに決っして表にはもう出る事はないような、忘れ去られ、そっと消えてゆく物 にスポットを当てている。

独自に制作を続けている平川の絵画は、技巧的でないが故に、彼女が閃いた「ユートピア」の生々しさを伝えてきます。薄く塗られたアクリル絵具の奥にもう一つ別の世界が鉛筆で描かれているなど、習作を経ることなく即興的に創られた画面からは、虚構の世界の中での精神の「遊び」を垣間みることができます。このような「遊び」が、私たちが現代社会で生きる上でいかに重要かを、平川の作品は気負うことなく提示しています。

また地方在住のせいか、トレンドにスポイルされることなく保たれている平川の世界観と芸術に対する姿勢は、現代社会に対しての問いかけを鋭く見せています。
弱冠24歳ながら、一貫して特異な世界を描き続ける平川の最新作を皆様に是非ご覧いただければ幸いです。

 

 

 

Natsumi HIRAKAWA

 

 

 

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