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小林耕平展「あなたの口は掃除機であり、ノズルを手で持つことで並べ替え、 電源に接続し、吸い込むことで語る」

Kohei KOBAYASHI

Kohei KOBAYASHI

 

 

 

小林耕平の活動は、ここ10年あまりの間に大きく変化しています。注目されるきっかけとなった、低解像度監視カメラでの撮影による閉鎖空間の中で人物の曖昧な影がうごめく1999年制作のモノクロ映像「1-3-1」にはじまり、2000年代半ばには、人物の影の映像に加え、関係性が希薄でどこか不穏な行為や風景の断片が連なる「2-2-1」のような作品を発表しました。そして、ある街の道端にペットボトル、ビニールひもや紙くずなどの何気ないモノが意図的にちりばめられ、作家自身がゴミ拾いをしたり、自転車に乗ったりと、ありふれた行為を淡々と続ける「2-8-1」のような2000年代後半の作品へとつながっていきました。

また、近年小林は映像を使い取り組んできたこうしたプロセスを、パフォーマンスという形式でも積極的に展開するようになりました。本年9月に国立近代美術館(東京)で開催されたパフォーマンスシリーズ「14の夕べ」では、文学・パフォーマンス研究者の伊藤亜紗氏が書きおろしたテキストをガイドとして、山形育弘氏との2時間にわたるパフォーマンスを行いました。伊藤氏は、たとえばある女優のテレビでの「スイカはカブトムシの味がするからきらいだ」という発言を例に、女優、カブトムシ、スイカそれぞれの性質が貸し借りされ「認識的飛躍」が生まれることを指摘し、同様に「人」の性質を「山」に貸し与えることにより、「時間的飛躍」を生むことができるだろうと説明しています。このテキストにもとづいて組み立てた「オブジェクト」が全体に配置された同美術館の展示室において、小林はタイムマシンの構造を言葉によって解説しようとし、さらにタイムトラベルの実践を試みました。

本展「あなたの口は掃除機であり、ノズルを手で持つことで並べ替え、電源に接続し、吸い込むことで語る」は、この国立近代美術館でのパフォーマンス時に制作したオブジェクトと映像作品「タ・イ・ム・マ・シ・ン」、及び伊藤氏による新テキスト「殺・人・兵・器」をもとにした新作映像作品に加え、「2-9-1」の続編の二部構成で行われます。

なお会期中の11月22日(木)には、展示スペースでの公開パフォーマンスも予定しており、伊藤氏による新しいテキストに沿って構成しなおされたオブジェクトとともに複数の映像とパフォーマンスを平行して提示してみせることで、モノ/行為/言語の認識をめぐって生まれる「飛躍」の可能性と不可能性を私たちに体験させることを試みます。

 

 

 

展覧会 参照テキスト「殺・人・兵・器」「タ・イ・ム・マ・シ・ン」
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デモンストレーション 参照テキスト「殺・人・兵・器」「生・命・誕・生」
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(文=伊藤亜紗)