Artist:西尾康之
西尾康之展「R E M (Rapid Eye Movement)」
西尾康之展「R E M (Rapid Eye Movement)」
2016年10月29日(土)〜12月3日(土)
開廊時間:11:00 – 18:00(火・水・木・土) 11:00 – 20:00(金)
オープニングレセプション:2016年10月29日(土) 18:00 – 20:00
わたくしども山本現代では、2016年10月29日(土)から12月3日(土)まで、西尾康之個展『R E M (Rapid Eye Movement)』を開催いたしますのでご案内申し上げます。
「死」あるいは「虚無」に対する恐怖心と、「生」に対する意思をテーマにした彫刻や幽霊画などで知られる西尾ですが、4年ぶりの個展となる今展では、3DCGのアニメーション技術を用いた新たな「彫刻」を発表します。
人物を模したその「彫刻」は、物質として存在するものではなく、あくまでもコンピュータ・グラフィクス(CG)で創り出された「数値的造形」です。鑑賞者はヘッドマウントディスプレイを装着し、3DCGで創られた群像を視覚的に「体験」します。タイトルの『R E M (Rapid Eye Movement)』とはレム睡眠時の急速眼球運動を意味していますが、西尾にとって睡眠とは「死と再生を覚え、虚無とのかかわりを象徴している生理作用」であり、レム睡眠を「存在と虚無の狭間」の状態と考え、今展の主題に据えています。
西尾による新たな群像は一見、非常に古典的な彫刻のように見えますが、横たわるそれらの像を観察すると、彼らが静かに呼吸をし、閉じた瞼の内側で目を動かしている様子が見て取れ、彼らが眠っている—夢を見ている—ことに気付かされます。
そもそも、実際に”在る”塑像—彫刻とは動かない”モノ”であり、その存在を西尾は「死」そのものとして考えていたと言います。死の象徴たる塑像が動き、呼吸をしている。一方で、鑑賞者はヘッドマウントディスプレイを装着することで現実世界への視界を完全に遮断され、西尾が創ったヴァーチャルな世界だけが見えるようになります。自分の手を目の前にかざしても、それを見ることはできません。視覚だけで仮想現実に漂う鑑賞者は、まるで肉体を失った霊魂のように「実存しない」…。このように、西尾が創り出したCGの中では、生と死、実存と虚無がたちまち入れ替わります。
また、ヘッドマウントディスプレイを装着した鑑賞者の肉体は、ヴァーチャルではない「こちらの世界」に存在することになります。
視覚を仮想世界に奪われた鑑賞者が確実に安全でいられるように(「死なないように」)、長さ数メートルの板渡しとして設定される鑑賞空間は、作家によって過度とも取れるほどの保護対策がとられます。これについて西尾は「置き去りにされた肉体を守るべく過剰に保護策を講じるのも、作者の存在不安の表れでもあり、仮想界を利用した文化への不安そのものでもあるのです」と述べています。
また、「存在不安の果てに彫刻制作を続けてきた私にとって、CGの虚無性は結論そのものであり、CG技術は存在と虚無の狭間に触れる道具としてこそ重要だと思うのです。」と西尾が言うように、4年の時を経て満を持して開催しますこの個展では、3DCGという技術によって作家が長年追求しているテーマがより明確に、強固になりました。ぜひこの機会に足をお運びいただけましたら幸いです。皆様のお越しをお待ちしております。
【ご注意】
本展覧会ではヘッドマウントディスプレイを使用した作品を展示いたしますので、以下の点にご注意ください。
・13歳未満のお子様のご観覧はご遠慮ください。
・ 健康に不安のある方は自己責任でご観覧ください。
・一度にご観覧いただける人数は限られています。混雑の際は整理券をお配りいたします。