Artist:タケシ・ムラタ
Takeshi Murata 「Living Room」
Electrolyte, 2012
Pigment print, H161cm x W216cm
Takeshi MURATA 個展 「Living Room」
2017年10月21日 (土)〜11月25日 (土)
※12月22日(金)まで会期延長します。また一部展示内容を入れ替え予定です。
日月祝休廊
開廊時間:11:00-18:00(火/水/木/土)、11:00-20:00(金)
オープニングレセプション: 2017年10月21日(土) 18:00-20:00
ムラタタケシは1974年に米国シカゴに生まれ、ロードアイランド・スクール・オブ・デザインで映像とアニメーションを学んだ後、ニューヨークを経て、2016年よりロサンゼルスで活動するアーティストです。アメリカ・ニューヨークのカッティングエッジを代表するギャラリー サロン94や、サンフランシスコのレイシオ3に所属し、これまでワシントンのハーシュホーン美術館で個展を行い、サンフランシスコ近代美術館やニューヨークの近代美術館、ニューミュージアム、ロサンゼルス現代美術館、また北京のユーレンス現代美術センター、ポーランドのワルシャワ近代美術館でのグループ展など、アメリカ国内外で数多くの展覧会に参加しています。
ムラタは、極彩色を取り入れたサイケデリックなアニメーション・パターンが観客を異空間に引き込むような「Pink Dot」や、1930年代から世界中で知られるコミックキャラクター「ポパイ」をアイロニカルな空想で新たなラブ・ストーリーに展開する「I, Popeye」などのヴィデオ作品をはじめ、水面の絶え間ないモーションを3Dソフトウェアとストロボライトをもとに、視覚的錯覚を援用して空間内に立体を現前させる「Melter 3-D」など、デジタル技術とアナログ的な手法を横断的に用いた創作活動をしています。また、CG(コンピューター・グラフィックス)によるハイパーリアルなムラタの写真作品には、ウィンドウ・ディスプレイや商品カタログのような私たちの欲求を肯定的に効率良く満たす視覚体験を出発点に、音を出すことのできないトロンボーンやフレンチホルン、画面が割れた携帯電話、歪んだ自転車、動物の化石、無造作に倒れるチェス盤など、本来の目的を骨抜きにされたモチーフが奇妙な構図で配置されています。それらはラテン語で空虚やむなしさを意味する「ヴァニタス」を彷彿させ、スーパークリーンな静物や風景の中にノスタルジーの残り香が漂い、現代におけるアンダーグラウンド・カルチャーやヴァンダリズム、消費社会などを映しながら、画面上で不安定なバランスのもとに物語性が幾重にも同居しています。時に、実物大のセットを組み立て、ガラスの表面に映る逆側の風景や伸びる影も緻密に捉えるその圧倒的な描写は、非現実の世界を無限に作り出すことが可能なコンピューターのクリエーションと真逆の行為ともいえます。自身の制作スタジオを大量のスチール写真に収めてスキャニングし、現実の世界をデジタル技術の中に放り込んで再構築した創造的かつ破壊的なヴィデオ作品「Night Moves」も、ムラタによる空間と次元の自由な往来によるものです。
本展「Living Room」は、ムラタの創作の原点ともいえるヴィデオ作品と新作の写真作品に加え、派手にカスタマイズされたローライダーや日本のデコレーショントラック(デコトラ)、1980年代にイタリアで結成されたエットレ・ソットサス率いる前衛的なデザイナー集団のメンフィス・デザインなどから影響を受けたオブジェを一堂に展示します。その展示空間全体が、機能性や合理性を追求し、社会的地位も匂わすような居住空間 ー Living Roomのデザインとその在り方に疑問を呈したポストモダンへの標榜を表しているかのようです。
アメリカの大衆コミックからB級映画や実験映像にはじまり、ピクセレイトされたデジタル表現とそこから飛び出したかのような工業用素材による立体作品は、刷新し続けるコンピューター技術にどのような視座を向けるのでしょうか。また、進歩し続けるそれらの技術と表現にまだ蔓延って残る私たちの身体性を発見することは可能でしょうか。